「日本語を伝達ツールとして見直していく」(徳永あかね氏講演会)を終えて
文化セミナーはこれまで3、4名の講師によるシンポジウム形式で行っていましたが、新型コロナウィルス感染予防の観点から講師の密状態を避けるために、シリーズテーマのもとに毎年講師一人による講演会を数年にわたって連続開催する形式としました。
今回のシリーズテーマは「多文化共生とコミュニケーション」です。
日本の人口減少が進む中、外国人に日本で働いてもらわなければ日本社会が成り立たなくなることが確実になってきており、外国人労働者の受け入れを増やすために入管法が2019年に改正されました。しかし、移民に対して厳しい政策を取っていることも含め、必ずしも日本は外国人が住み、働きたい国とは見られていない現実もあります。それでも今後、外国人をはじめ異なる文化を背景に持った人たちと日本国内で共生したコミュニティづくりがより一層求められていくことは間違いありません。
第1回講演会は、コミュニケーションに欠かせない言葉の問題に関して、神田外語大学アジア言語学科准教授の徳永あかねさんに「日本語を伝達ツールとして見直していく」というテーマで講演いただきました。
はじめに、「共生」とはどのような状態なのかの具体的なイメージから話を始められ、日本人の母語が日本語だと限らない場合や、日本語が母語だから日本人と限らない場合など、多様化しつつある「ことば・文化・人の組み合わせ」をわかりやすく説明されました。
またコミュニケーションについては、外見などによって話をする前の段階でコミュニケーションを回避する行動をとったり、話す相手を一方的に選ぶなどの行動パターンについての説明など、日頃無意識に行っている行動を意識化していただきました。
その後、阪神淡路大震災直後の外国人地震相談窓口での相談言語が、「母語が無理なら日本語で」という調査結果でもわかるように、日本に住む外国人とのコミュニケーションにおいて日本語が果たす重要性とそれに対応した「やさしい日本語」の概念について、多くの実例をあげながら具体的に話をされました。
日本語を母語としない人とのコミュニケーションにおいては「対話」することが大切であり、
– 「相手の話を勝手に引き取らないで最後まで聞く」
– 「相手の日本語がはっきりしない時は確認する」
– 「相手が言葉を探している時は助け舟を出す」
という態度が求められることが示されました。
講演の後は、福岡で日本語学校の校長も経験して、外国人の日本語教育に長く携わってこられ、昨年まで福岡女子大学で留学生の日本語担当専任講師を務めておられた川邊理恵さんに代表質問者になっていただき、講演の内容を補完する質疑の司会をしていただきました。
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