「北欧諸国はなぜ幸福なのか」を終えて
スウェーデンを中心とした北欧諸国の研究者、鈴木賢志さん(明治大学国際日本学部教授)による講演「北欧諸国はなぜ幸福なのか」は、欧米とはいっても日本でよく報道されるアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなどとは違って、あまり知られていない北欧の人々の生き方や考え方を知ることができる貴重な機会となりました。
自分の人生の満足度を10段階で自己申告する世論調査によって得られた数値の平均値によって各国を比較する世界幸福度報告で、ベストテンにいつも入っているフィンランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、アイスランドの北欧諸国と日本(2019年に58位、先進国36か国中では32位)の違いはどういう点にあるのでしょうか。政治制度、経済体制は同じようであるにもかかわらず、北欧と日本で最も差が出ているのが、「人生の選択の自由に対する満足度」で、北欧の人々は90%以上の満足度を示しているのでした。
高負担ですが教育がすべて無料であるので、失業しても新しい職を得るために職業訓練を受けたり、大学で勉強したりして自分の才能を見つけるチャンスを得ることができ、誰でもがもてる力を発揮して高い経済力を達成し、そのことにより高い福祉サービスを提供できるようになるという循環型の社会構造ができているところが北欧諸国の強みなのでした。個人の力が発揮できないのは、個人の不幸だけではなく社会にとっての損失であるという考え方がいきわたっているということでした。
日本との教育の違いは顕著で、小学校の社会科の教科書には、自分の考えを実現するために友人や親類に署名を求めたり新聞に投書する、あるいはデモを行ったり政治家に直接連絡することなど現実的な方策も掲載されているということです。
毎週金曜日に学校を休んで地球温暖化対策を呼び掛ける活動をしているスウェーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんが、EUの会議で意見を述べる機会が提供されるなど、各国に影響を与えていることが報道されていますが、彼女の行動が小学校の社会科教科書の延長線上にあるもので、決して特異なものないこともよくわかりました。若い人ほど国の政策の影響を長く被るので、意思表示をはっきりさせるという現実的な考え方が、選挙における学生の約85%の投票率の高さに繋がっているのでした。
参加された方々も熱心に講演を聞かれて、講演後に福祉から政治の分野まで多くの質問が寄せられました。痒い所へ手が届くようなサービスが提供されている日本とは少し社会の雰囲気が違うようですが、幸福の意味について考えるうえで、ひとつの対照とはなる国々のお話でした。
【講演録ができました】
講演内容をまとめた書籍を刊行しました。
→北欧諸国はなぜ幸福なのか
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