「七つの文学作品で読む韓国社会の過去と現在」(きむ ふな氏講演会)を終えて

2020年12月07日

「七つの文学作品で読む韓国社会の過去と現在」(きむ ふな氏講演会)

コロナ禍で会場内が密になることを避けるために、今回は天井が高く広い空間がある北九州市立文学館に会場を変更して講演会を実施しました。

きむ ふな氏「七つの文学作品で読む韓国社会の過去と現在」

講師は韓国文学と日本文学を日本語と韓国語に相互に翻訳している翻訳家のきむ ふなさん。
七つの文学作品で読む韓国社会の過去と現在」というテーマで、日本の植民地時代の1910年代から現代までの約100年間を、
– 1.植民地時代
– 2.分断とイデオロギー対立の時代
– 3.民主化運動の時代
– 4.グローバル社会の時代

と大きく4つに分けて、それぞれの時代の文学と社会について講演していただきました。

きむ ふな氏「七つの文学作品で読む韓国社会の過去と現在」

1.植民地時代では、福岡で死去した詩人、尹東柱(ユン・ドンジュ)を中心に、李箱(イ・サン)や李光洙(イ・グァンス)についても紹介されました。

2.日本の植民地から解放された1945年以降の時代では、南北に分かれて統治され国は二つに分裂し、そのイデオロギーの違いから起きた済州島の「四・三事件」等の凄惨な出来事、そして1950年に始まった朝鮮戦争は53年に休戦となるがその休戦状態が現在までも継続していることを説明されました。その時代を描いた文学として、38度線の少し北にある村の話しであるイ・ヒョン著『1945、鉄原(チョロン)』と、朝鮮戦争の体験をリアルに描いた女流作家、朴婉緒(パク・ワンソ)の作品が紹介されました。

3.次に、60年以降は経済が急速に成長していきますが、開発独裁と言われる朴正熙大統領による強権的な政治が続き、数度の民主化運動と光州事件のような軍による弾圧を経験しながら、1987年に民主化が宣言されるまでの時代が説明されました。これらの歴史や社会の動きを知らないままでは、韓国文学の内容が理解しにくいことは確かなので、文学作品の他に映画、歌も紹介しながらわかりやすく説明されました。この時代では、『菜食主義者』で韓国文学を世界的に注目させた作家韓江(ハンガン)が紹介され、光州事件を扱った『少年が来る』にも言及されました。

4.1990年以降のグローバル社会の時代を描いた作家としては、『カステラ』の著者パク・ミンギュや『フィフティ・ピープル』のチョン・セラン、そして『82年生まれ、キム・ジヨン』で日本にもファンが多いチョ・ナムジュの作品に触れられました。

「七つの文学作品で読む韓国社会の過去と現在」(きむ ふな氏講演会)

韓国の近現代史と社会状況を日本人に短時間で説明するのはたいへん難しいため、講演は予定を15分ほど超過しましたが、その熱気あふれる話の内容に参加者は最後まで聴き入っていました。

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