That the wide diffusion of culture, and the education of humanity for justice and liberty and peace are indispensable to the dignity of man...
アジアと出会う旅 ―ボクシング資料が切り拓く日本・フィリピン関係史を終えて
2018年10月25日
九州大学大学院の修士及び博士課程で研究してきた乗松 優氏は、自らボクシング界に身を置いた経験とともに日本とフィリピンの関係を知るうえでボクシングというスポーツが果たした役割の大きさに驚き、両国のボクシングに関する資料をコツコツと探し集めた経緯を中心に、1950年代のボクシングの試合の映像も見せながら話をされました。
第2次世界大戦中に、日本からフィリピンに渡った軍人の数が60万人。そのうちの50万人が戦死し、フィリピン人は現在の北九州市の人口よりも多い110万人が死亡したというフィリピン戦の壮絶な現実の上に戦後の日比関係はスタートしました。当然のごとく両国の関係は悪く、戦後冷戦がスタートして、フィリピンの元宗主国であったアメリカが日本に対する賠償請求の放棄を働きかけてもフィリピンが同意しなかったほど、厳しいものでした。
1952年にフィリピンの興行師ロッペ・サリエル氏とと日本の興行師が協力して行った東洋選手権が日比間の関係改善に新たな一歩を提供し、その後の両国の交流に果たしたボクシングの役割を、サリエル氏の娘エロルデさんが大事に保管していた家族写真等の個人的資料に接することにより、歴史的に跡づけていきます。たりない部分は生存している選手自身への直接のインタビューによる確認等で補っていきました。
個人の資料や生存している人物の記憶などが、既存の歴史観を検証する上でどんなに大切かが臨場感を持ってわかる興味深い講演会でした。
【講演録ができました】
講演内容をまとめた書籍を刊行しました。
→ボクシング史料が語るアジア《日本・フィリピン関係史》
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