「アメリカをもっと深く知ってみる―なぜトランプが出てきたのか?」を終えて
2016年のアメリカ大統領選挙で、なぜビジネスマンのドナルド・トランプ氏が共和党において多くの候補者が林立する中で予備選を勝ち抜き指名を獲得し、また大方の予想を覆して、民主党のヒラリー・クリントン氏を破って大統領になることができたのか。誰も予想しななかったトランプ大統領の誕生を、国内の製造業が衰退し、金融業が大きな利益を得ながら所得格差が拡大してきたアメリカ経済の動きや社会の変化から探っていこうというセミナー「アメリカをもっと深く知ってみる ―なぜトランプが出てきたのか?― 」が終了しました。
アメリカの政治・外交史が専門の古矢 旬氏(北海商科大学教授)をコーディネーターに、アメリカ経済を研究されている中本悟氏(立命館大学教授)とアメリカウォッチャーとして活躍されている安井明彦氏(みずほ総合研究所欧米調査部長)のパネリストを加えた3人にそれぞれ1時間ずつ発表していただき、その後3人による討議という2本立ての構成で開催しました。
中本悟氏は「トランプ大統領の政治・経済学―アメリカ社会の行方―」というテーマで、また安井明彦氏は「格差、トランプ、モビリティ」のテーマでそれぞれ詳しいデータを示しながら、1980年代からトランプ大統領誕生に至るまでの格差が拡大していく経済状況やアメリカ国民の社会生活状況をお話しいただきました。
また、古矢旬氏には第2次世界大戦後に世界の製造の半分を占めていたアメリカが、ベトナム戦争に敗れて孤立主義の時代を経て、アメリカ政治の転換点となったニクソン大統領の頃から現在までの歴史を概観していただきました。現在のトランプ政権の内実やトランプ氏の世界観、アメリカ・ナショナリズムの変化や現政権の今後の問題点についても言及されました。
討議では、フロアーからの質問にも答えながら、トランプ政権の今後の予想、日本との関係などについて議論が交わされました。トランプ政権が誕生して1年以上が経過しているにもかかわらず、国務大臣や大統領補佐官の交代がいまだに続き、政府ポストの多くの部分でポストが埋まっていないという異常な状態で政治が行われている、アメリカ史上最も不思議な時代について知り、考えることができるセミナーでした。
BLOG
- 「言葉は世界を変えられるか」(中島岳志氏、國分功一郎氏の講演と対話) を終えて
- 「江戸時代における長崎への画家遊学」(福岡ユネスコ・アジア文化講演会)を終えて
- 「森鷗外とドイツ文学」(美留町義雄氏講演会)を終えて
- 「往還する日・韓文化の現在」(伊東順子氏講演会)を終えて
- 「宗教・文化からみたロシアとウクライナ」(高橋沙奈美氏講演会)を終えて
- 「変わる中国、変わらない中国」(岸本美緒氏講演会)を終えて
- 「多文化共生とコミュニケーション・外国人との共生がコミュニティを豊かにする」を終えて
- 「ラテンアメリカ文学の魔力」(寺尾隆吉氏講演会)を終えて
- 「映画創作と自分革命」(石井岳龍氏講演会)を終えて
- 「大陸と日本人」(有馬学氏連続講演会)を終えて
- アジア文化講演会「生きる場所、集う場所」を終えて
- 「多文化共生を実現するために、私たちのできること」(オチャンテ・村井・ロサ・メルセデス氏講演会)を終えて
- 「『台湾』を読む」(垂水千恵氏講演会)を終えて
- 「コロナ危機以降のアジア経済」を終えて
- 「蘭学の九州」(大島明秀氏講演会)を終えて
- 「日本語を伝達ツールとして見直していく」(徳永あかね氏講演会)を終えて
- 「七つの文学作品で読む韓国社会の過去と現在」(きむ ふな氏講演会)を終えて
- 「琉球沖縄史を見る眼 〜なぜ『茶と琉球人』を書いたのか?」を終えて
- 「日本映画は中国でどのように愛されてきたのか」を終えて
- 「魯迅―松本清張―莫言 ミステリー / メタミステリーの系譜」を終えて
- 「対外関係から見た中国」を終えて
- 「「平成」とはどんな時代だったのか」を終えて
- 「北欧諸国はなぜ幸福なのか」を終えて
- 「人口減少社会 ― その可能性を考える」を終えて
- 「19世紀ロシア文学とその翻訳」を終えて
- 福岡ユネスコ・アジア文化講演会「アオザイ」を終えて
- アジアと出会う旅 ―ボクシング資料が切り拓く日本・フィリピン関係史を終えて
- 「日本(イルボン)発韓国映画の魅力を探る」を終えて
- 「アメリカをもっと深く知ってみる―なぜトランプが出てきたのか?」を終えて
- 「香港におけるアヴァンギャルド文化とその未来」を終えて
- 「文学の国フランスへのお誘い」を終えて
- 「英国のいま、そして日本は?」を終えて
- 「言葉でアジアを描く―現代文学とアジア」を終えて
- 「外国文学を読む。訳す。~柴田元幸氏による講演と朗読の夕べ~」を終えて
- 「メディアは、いま機能しているのか?」を終えて
- 「インドから見たアジアの未来」を終えて
- 「国境(ボーダー)が持つ可能性―日本と隣国の最前線を見る」を終えて
- 『ヘヴンズ ストーリー』のその先へ を終えて
- 日韓メモリー・ウォーズ ―日本人は何を知らないか― を終えて