福岡ユネスコ・アジア文化講演会「アオザイ」を終えて
福岡ユネスコ・アジア文化講演会の講師を務めていただいたベトナムの代表的なファッションデザイナー、ミン・ハンさんによる「アオザイ―その伝統的価値と現代生活への影響力―」というテーマの講演会は、たいへん華やかなものになりました。
2015年に福岡アジア文化賞の芸術・文化賞を受賞されたミン・ハンさんに講師の打診をした当初の予定では、ベトナムの国民的衣装アオザイの主に19世紀以降の変遷について、ミン・ハンさんが多くの写真やファッションショーの様子を撮影した動画などをスクリーンで見せながら講演するという通常の形式の講演会の予定でした。
しかし、8月後半に、自分のスタッフやモデルを連れてきて、講演の中で実際のアオザイの服装を観客に見せるようにしたいという提案を出され、11月8日の講演会ではベトナム人の女性モデル3人が時代の変遷にしたがって約50着のアオザイを披露してくれました。
アメリカとの戦争や国の南北統一など多くの困難を経験している時代はあまり顧みられることがなかったアオザイが1980年代には復活して、現在ではベトナム人にとってとても親しみのあるものになっているそうです。この親しみは突然生まれてきたものではなく、アオザイが時代とともに変化をしてきて、特に若い人がその変化を受け入れて、便利に使いたいと思うようになってきたからだそうです。
もう美しくスタイルがいいモデルしか着ることができない衣装ではない。アオザイを自分たちの誇りとして着用したい、毎日の生活のいろいろなケースでアオザイを使いたいと思う若い人達の希望に沿って、簡単に着用できるように変わってきているということです。
アオザイが将来的により強く発展していくための力となり、その価値を高めていくのは伝統的価値しかないと考えています、というのがアオザイに対するミン・ハンさんの強い思いでした。聴衆にアオザイの歴史だけではなく、その美しさを身近に感じてもらえる講演会となりました。
【講演録ができました】
講演内容をまとめた書籍を刊行しました。
→ 『アオザイ その伝統的価値と現代生活への影響力』
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