21世紀中国の文化構想 —和合学がめざすもの—

2008年01月31日

第13回国際事情研究会

2008年1月31日、福岡市の天神ビルにて、2時間にわたり上記研究会を行いました。
今回は、「21世紀中国の文化構想 ~和合学がめざすもの~」というテーマで難波征男氏(福岡女学院大学教授)にご講演いただきました。

「和合学」は孔子、孟子の儒教や朱子学、陽明学など東洋思想に新しい光を当て、これからの時代にふさわしい智慧を求めようとする新しい潮流。
そのご講演内容を難波先生のレジュメの一部でご紹介します。くわしくは、次回発行の会誌『FUKUOKA UNESCO』44号に掲載いたします。

…孔子は「泛(ひろ)く衆を愛す」といい、墨子は「兼ねて相い愛す」という。
『礼記』 礼運は「人独りその緯を親とするのみならず、独りその子をその子とするのみならず」という。
張載は「民は吾が同胞、物は吾が与なり」という。
こうした儒家の「民を仁し物を愛す」という精神は、自然・社会・他人・他人の精神・他の文明に愛心(思いやり)を与えるものであり、和生・和処・和立・和達を愛心の指導下で、実施し施行させるものである。
世界の異文明の間には、価値観念・宗教信仰・文化背景・思考方式・倫理道徳・風俗習慣などの色々な違いがあるが、一方で人類が直面している衝突と危機は共通のものだ。
それには国境・民族・人種の区別はなく、砂塵が海を越え、温室効果が温暖化をもたらすように、その影響は全地球的なものであり、人は等しく逃れることができないのだ。
これこそ文明対話の共通の基礎である。この共通の基礎があり、異なる文明の間で同じか、あるいは似たような目標を追求すれば、最低限度の共通認識は得られる。
たとえ共通認識に各自の解釈があっても、人類がともに直面している五つの衝突と危機(※)を解消したいという願望は同じであろう。…

※五大危機 - 生態的危機(人と自然の間)、社会的危機(人と社会)、道徳的危機(人と人)、精神的危機(こころ)、価値観的危機(異文明の間)

○張立文氏
 「和合学」提唱者(1935年、中国浙江省温州) 『和合学概論-21世紀文化戦略構想』上下(96年12月首都師範大学出版社) 
 中国人民大学教授、中国人民大学孔子研究院院長

○難波征男(なんばゆきお)氏
 1945年生まれ、岡田武彦氏(九州大学名誉教授)、荒木見悟氏(九州大学名誉教授)に師事。
 「身は父母の遺(伝子の和合)体」などの著書。国連ユネスコの会議、京都フォーラムに参加している。

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講演会・セミナー活動について

福岡ユネスコ協会は日本研究者の方々をお招きし、様々な催しを開催してきました。 その一つ一つが、内外の研究者の方々の最新の発表と活発な討議を通して世界の目からみた日本の文化、そしてこれからの日本の在り方を示唆するものと高い評価をいただいております。 福岡ユネスコ協会は今後もこうした日本研究の発表の場をつくり、日本の文化を世界に発信する架け橋でありたいと願っています。 これらの会議、セミナー、シンポジウムは一般の方々に公開しております。会議用語は原則として日本語です。 一部外国語を使用する場合にはその旨を事前にご案内し、通訳や日本語資料の参照などで補います。 皆さまのご参加をおまちしております。

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