福岡ユネスコ文化セミナー 2014 アジア主義―その先の近代へ
会場:電気ビル共創館3階 カンファレンス大会議室
(福岡市中央区渡辺通、定員180人)
テーマ:「アジア主義―その先の近代へ」
趣旨:竹内好は『日本のアジア主義』(1963)の中で、宮崎滔天が思想的に岡倉天心と出会わなかったことについて、「それはなぜなのか、というのが私の問題である」と述べました。
西洋とは違った形での近代化を目指した日本のアジア主義は、第2次世界大戦後にその否定的側面が強調されて、歴史の表舞台から遠ざかってしまいました。そのような中で、アジア主義の鉱脈をたどり直すことは、近代化の先が見えにくい現代において、東洋世界がもつ豊かな思想的可能性を追求する新たな試みとなります。
午後に各パネリストの発表(各人50分程度)
パネリストの発表後コーディネーターを含めて討議(90分程度)
中島岳志氏(北海道大学准教授)…コーディネーター
安藤礼二氏(文芸評論家)
若松英輔氏(批評家)
・中島岳志氏:1975年大阪府生まれ。現在北海道大学大学院法学研究科・公共政策大学院准教授。
専門は南アジア地域研究、近代思想史
主な著書:『中村屋のボース』(大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞)『ナショナリズムと宗教』(第一回日本南アジア学会賞受賞)『中島岳志的アジア対談』『秋葉原事件』『血盟団事件』『岩波茂雄 リベラル・ナショナリストの肖像』
・安藤礼二氏:1967年東京都生まれ。文芸評論家。
主な著書:『祝祭の書物』『たそがれの国』『光の曼陀羅』『神々の闘争』他。
・若松英輔氏:1968年新潟県生まれ。批評家。「三田文学」編集長。
主な著書:『井筒俊彦』『魂にふれる』『池田晶子 不滅の哲学』他
一般:事前申込 1500円(当日1700円)
学生・留学生 1000円(事前・当日とも)
催し名(「アジア主義」)、氏名(参加者全員)、連絡先FAXまたはメールアドレス、
一般/サポーター/学生等の別を明記の上、メールかFAXで申し込んでください。
メールアドレス:fuunesco2014@gmail.com、FAX:092-733-1291 締め切りは2015年1月20日
【セミナーを終えて】
「アジア主義―その先の近代へ」をテーマに、2015年1月24日(土)福岡ユネスコ文化セミナーが開催されました。
午前中の基調講演は、北海道大学准教授の中島岳志さんが、幕末から現代までの日本のアジア主義の流れを分かりやすく語られました。明治の自由民権運動からアジア主義が生まれた経緯、特に福岡に起こった玄洋社の近代に対するアンチテーゼをめざした活動がうまくいくほど近代の構造を強化する方向に進んだ逆説など、その果たした成果や課題を詳しく説明されました。
思想的アジア主義については、「アジアは一つ」と言った岡倉天心とインド哲学の関係、イスラムの原理を取り入れようとした大川周明がもっていた思想的可能性の大きさ等に触れながら、鈴木大拙や柳宗悦などが目指していた「多元的一元論」、それを現代に受け継いできた井筒俊彦の可能性など、未来につながる内容を含んだ基調講演でした。
午後のパネルディスカッションでは、まず最初に「東洋はどこにあるのか」と題して批評家の若松英輔さんが話しをされました。岡倉天心が西洋との出会いの中で発見し、旅先で英語により発表した『東洋の理想』から、柳宗悦が求めた美と平和の源泉としての東洋を経て、井筒俊彦による哲学的主題による東洋までの精神的、霊的な面から見た東洋について語られました。
パネリスト2人目の文芸評論家の安藤礼二さんは「夢野久作のアジア」と題して、福岡で生まれた作家・夢野久作を同時代の宮沢賢治と比較しながら話されました。
久作の『ドグラ・マグラ』は「固体発生は系統発生を繰り返す」という生物学的な進化の考えと仏教的な哲学を取り入れた壮大なアジアのビジョンを作り上げようとした作品との論点から、生物進化の根源にある絶対的な「一」と『法華経』が説く絶対的な「一」など多様なものの中に存在する、生命体がひとつに結ばれている感覚について語られました。
3人による討議は、東洋が井筒俊彦が考えたようにギリシア以東くらいの広い範囲での精神的な共通性がみられる点や宗教に関することなど幅広く意見が出され、40年以上前に竹内好が提起したアジア主義に関する論議を一歩先に進ませようとする刺激に満ちた討議となりました。
2015/02/25
午前中の基調講演は、北海道大学准教授の中島岳志さんが、幕末から現代までの日本のアジア主義の流れを分かりやすく語られました。明治の自由民権運動からアジア主義が生まれた経緯、特に福岡に起こった玄洋社の近代に対するアンチテーゼをめざした活動がうまくいくほど近代の構造を強化する方向に進んだ逆説など、その果たした成果や課題を詳しく説明されました。
思想的アジア主義については、「アジアは一つ」と言った岡倉天心とインド哲学の関係、イスラムの原理を取り入れようとした大川周明がもっていた思想的可能性の大きさ等に触れながら、鈴木大拙や柳宗悦などが目指していた「多元的一元論」、それを現代に受け継いできた井筒俊彦の可能性など、未来につながる内容を含んだ基調講演でした。
午後のパネルディスカッションでは、まず最初に「東洋はどこにあるのか」と題して批評家の若松英輔さんが話しをされました。岡倉天心が西洋との出会いの中で発見し、旅先で英語により発表した『東洋の理想』から、柳宗悦が求めた美と平和の源泉としての東洋を経て、井筒俊彦による哲学的主題による東洋までの精神的、霊的な面から見た東洋について語られました。
パネリスト2人目の文芸評論家の安藤礼二さんは「夢野久作のアジア」と題して、福岡で生まれた作家・夢野久作を同時代の宮沢賢治と比較しながら話されました。
久作の『ドグラ・マグラ』は「固体発生は系統発生を繰り返す」という生物学的な進化の考えと仏教的な哲学を取り入れた壮大なアジアのビジョンを作り上げようとした作品との論点から、生物進化の根源にある絶対的な「一」と『法華経』が説く絶対的な「一」など多様なものの中に存在する、生命体がひとつに結ばれている感覚について語られました。
3人による討議は、東洋が井筒俊彦が考えたようにギリシア以東くらいの広い範囲での精神的な共通性がみられる点や宗教に関することなど幅広く意見が出され、40年以上前に竹内好が提起したアジア主義に関する論議を一歩先に進ませようとする刺激に満ちた討議となりました。
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講演会の様子はblogでもご報告しています。
次のリンクからご覧ください。
→「アジア主義―その先の近代へ」を開催
講演会・セミナー活動について
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